ユニクロ、ソックス値上げを撤回 まとめ買いも継続「靴下は必需品」
〜ユニクロの値上げ撤回から考える、これからのものづくり〜
最近、ユニクロが靴下の値上げを撤回したことが話題になっています。
原材料費や人件費など、さまざまなコストが上昇する中で、企業にとって価格改定は避けて通れない課題です。
一方で、消費者にとっても値上げは決して歓迎できるものではありません。
そんなニュースを見て、以前聞いたある靴下ブランドの話を思い出しました。
そのブランドでは、靴下を1,500円・2,000円・2,500円という3つの価格帯で販売していたそうです。
その後、徐々に値上げを行い、2,000円・2,500円・3,000円に。
ところが、値上げ後も3つの価格帯の売上バランスはほとんど変わらなかったそうです。
いわゆる「松竹梅」の価格設定です。
この話を聞いて、お客様は必ずしも価格の安さだけで商品を選んでいるわけではないのだと感じました。
もちろん、ユニクロとこの靴下ブランドでは、価格帯も顧客層も販売戦略も異なります。
それでも、この2つの話から考えさせられることがあります。
それは、「価格で選ばれる商品」と「価値で選ばれる商品」の違いです。
お客様は本当に「安さ」で選んでいるのか?
商品を販売するとき、どうしても価格は気になるものです。
「高くしたら売れなくなるのではないか」
「もう少し安くした方が選んでもらえるのではないか」
しかし、お客様は必ずしも安い商品だけを選んでいるわけではありません。
品質やデザイン、使い心地、ブランドへの信頼など、商品を選ぶ理由はさまざまです。
今回の靴下の話も、価格の安さだけではなく、それぞれの商品に感じる価値によって選ばれていた可能性があります。
もちろん、売上バランスが変わらなかったことだけで、値上げによる販売数量への影響までは判断できません。
それでも、価格を上げたからといって、必ずしも安い商品に人気が集中するわけではないという点は興味深いと思います。
「松竹梅」の価格設定が持つ意味
商品を3つの価格帯で展開する「松竹梅」の価格戦略。
一般的には、真ん中の価格帯が選ばれやすくなる傾向があるといわれています。
しかし、今回の話から感じたのは、それだけではありません。
大切なのは、お客様が自分の求める価値に合わせて商品を選べることではないでしょうか。
価格が安い商品を選ぶ人もいれば、多少高くても品質やデザインにこだわりたい人もいます。
つまり、お客様は単純に金額を比較しているのではなく、その価格に見合った価値があるかを判断しているのだと思います。
「安いから買う」のか。
「欲しいから買う」のか。
この違いは大きいと感じます。
値上げをしなければ、年々厳しくなる
そして、今回の話でもう一つ考えたことがあります。
それは、これからの時代、値上げを避け続けることは難しいということです。
人件費、電気代、資材費、設備の維持費など、ものづくりにかかるコストは上昇しています。
特に縫製業は、人の技術と時間によって成り立っている仕事です。
働く人の賃金を上げ、技術を次の世代につなぎ、設備を維持していくためには、適正な加工賃が必要です。
例えば、毎年3%ずつコストが上昇すれば、5年後には約16%の上昇になります。
一方で、加工賃を据え置いたままでは、同じ仕事をしていても年々利益が圧迫されてしまいます。
値上げをしないということは、実質的に毎年値下げをしているような状況にもなりかねません。
もちろん、値上げは簡単なことではありません。
ブランド側にも予算があり、商品の販売価格との兼ね合いがあります。
しかし、無理な価格で生産を続けていれば、いずれ品質や納期、働く環境にも影響が出てしまいます。
だからこそ、これから重要になるのは、
「どうすれば安くできるか」だけではなく、「どうすれば適正な価格でも選んでもらえるか」。
という考え方なのだと思います。
縫製工場も「価格」だけで選ばれる時代ではない
私たちは日々、さまざまなブランドの服づくりに携わっています。
縫製工場にとって、加工賃はもちろん重要です。
しかし、ブランドが工場を選ぶ理由は、必ずしも加工賃の安さだけではありません。
縫製品質が安定していること。
細かな仕様や要望に対応できること。
納期や生産管理に安心感があること。
そして、長く一緒にものづくりを続けられる信頼関係があること。
そうした一つひとつが、工場の価値につながっているのだと思います。
弊社でも、同じ商品を5年以上にわたってリピート生産しているブランドがあります。
それは、ブランドが継続して生産してくださるだけでなく、その先のお客様が商品を気に入り、繰り返し購入してくださっているからこそ実現していることです。
流行が移り変わるアパレル業界の中で、同じ形の服が何年も選ばれ続ける。
そこには、価格だけでは説明できない価値があると感じています